concept

「山のセカンドハウス」は、核家族が週末に利用するセカンドハウスであり、私にとってこの場所は、情報に埋もれ時間に追われる“日常”から離れ、自然の中に身を置いて自分と向き合い創造力を膨らませることができる空間、リトリートとしての居場所である。

まず、南北方向に連続する自然を建築に取り込み、素材や光の入れ方、空間のプロポーション、外部空間の挿入など、それぞれの空間に違いが出るように計画し、7つの「ルーム」を東西方向に配置した。また、「ルーム」を貫くかたちで「窓」が計画され、様々な関係性をうみ出している。異なる大きさ・位置に設けられた「窓」は、見通せるルーム数や切り取り方に違いがあるだけでなく、1つの「窓」から複数の深度が同時に見えるようになっている。1つの「ルーム」を南北方向に移動すると、様々な「窓」を通して、他の「ルーム」とは無関係な位置、気配だけを感じられる位置、垣間見える位置、アクティビティ全体を把握できる位置と、他の「ルーム」との関係性を調整できる。

この「窓」を通して、家族との距離感を調整できること。様々な空間や家族のアクティビティが多角的に重なり合って感じられる体験。別々のアクティビティの様子が見えずとも間接的に繋がっていること。これらをセカンドハウスならではの空間体験と家族の繋がり方として提案した。

This house was built as a weekend second house where a family spends time different from weekdays. The house is located in a low mountain two hours’ ride in a car from central Tokyo, and surrounded by forests where many animal live. The location has few houses around in the dead-end place of the road. The north side of the house is a mountain, and the south side is a valley, providing rich nature such as spring fresh green and autumn colored leaves. Here, we can get a lovely view in north and south direction.

To make use of the characteristic of the site, 7 rectangular strip shaped rooms are placed in the east-west direction. Each room has no wall at the south and north ends. Instead of walls, large fit windows provide more perspective picturesque images taking outside nature into the house visually. Thanks to these glass windows, boundary between inside and outside become more unclear and dwellers can get sense of unity with outside nature.

To emphasize the characters of the rooms and to highlight quality differences, building materials, proportions of cross section, depths of rooms and the way of the insertion of the external space differ each other. Dwellers select favorite rooms according to time, season, and content of activities.

Between the rooms there is no door which close the space tightly. And fixed furniture such as sofa and bed are not placed. Most rooms are not restricted to one function. We prepare light movable furniture which are used inside and outside of the house. In proportion to changing daylighting or the round of the seasons, dwellers can obtain many options of activities in and around the house.

Plural 'glassless windows' which are opened in the walls between rooms are another feature of this house. These windows are different in size and position, and provide various fields and depths of view. If you walk through the room in the north-south direction, some standing position give you all view of the next room, and moreover the back room, but some give you a glimpse of the next room. There are positions where the sign of the next room can be felt faintly or felt not at all. Thus by the intended windows the family members will adjust the physical and psychological distances each other.

In designing the house, we groped for unusual space experiences and family connections unique to a second house.

detail

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様々な関係性をうみ出す「窓」の重なり

様々な関係性をうみ出す「窓」の重なり

7つの「ルーム」を貫くかたちで「窓」が計画され、様々な関係性をうみ出している。異なる大きさ・位置に設けられた「窓」は、見通せるルーム数や切り取り方に違いがあるだけでなく、1つの「窓」から複数の深度が同時に見えるようになっている 。

ダイニング

外部空間と一体的に使うダイニング

2枚の大きな引戸を開けるとダイニングと外部空間は一体的に使うことができる。引戸を開け放し、内部のダイニングテーブルには大人が集まり、外部のベンチを中心に子どもたちが座りバーベキューを楽しむ。出入りが頻繁なダイニングの床はタイルとし、汚れてもすぐに洗える素材をセレクト。

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半戸外空間 半戸外空間

半戸外空間の計画

「山のセカンドハウス」では、いくつかの軒のある半戸外空間を計画した。南側の天井が低く軒の深いテラスは、自分で割った薪を一年間乾かす場所を兼ねる。北側の天井が高く軒の深いデッキテラスはキッチンからの動線も便利で、雨の時のバーベキューコーナーとなる。コンクリート土間のテラスでは日曜大工を。外部での時間を長く過ごしてほしいと、雨を凌ぎ、日陰のある様々な特徴ある半戸外空間を計画した。

出入口と風通し

出入口と風通し

「山のセカンドハウス」には玄関がない。大荷物の時はダイニングの大きな引戸から、雨の時は軒のある北側の出入口から、川遊びから帰ってきたら洗い場の引き違い窓へ。薪をとりにいく時はこの扉、「離れ」に行く時はこの扉など、複数の出入口から外部にアクセスできる。また、この出入口の扉は通風を確保している。扉を開きプリーツ網戸を閉めれば、効率よく風を内部空間に引き込めるとされている「縦滑り出し窓」となり、内部空間に風を取り込む。

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大きな収納室(内部・外部)

ベッド代わりになる折り畳み式マットレスや毛布、石油ストーブなどの季節もの・掃除機・高圧洗浄機・洗濯機は内部の収納室の入れることで、それ以外の部屋にモノが溢れることはない。

屋外で遊ぶことが多いバーベキューセット・薪・炭・長靴・タープなど内部収納に入れるには気が引けるモノは外部収納室に保管されている。靴を履いたままアクセスでき、収納量が確保されていると便利。「山のセカンドハウス」では室外機や給湯器もここに収納し、外部から見えないように計画。

オーダーキッチン

オーダーキッチン

冷蔵庫を組み込み、収納機能も併せ持つキッチンとしたかったため、「リビングプロダクト」にお願いしたオーダーキッチン。

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薪ストーブ

薪ストーブ

秋になると斧で薪を割る。雨の当たらない場所で一年間置いて乾燥させる。火がついても放っておくと消える。この手間のかかる薪ストーブ「ワム クラシック 4」(DLD)が良い。優しい暖かさ、見ていて飽きない炎。冬場はここから離れられない。ストーブの上段にはピザなどが焼けるユニットをつけた。

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ホーローの浴槽

ホーローの浴槽

川遊びをしてそのまま入れる洗い場を計画するのと同時に、傷のつきにくいホーローの浴槽「キャスティエ」(大和重工)とした。500円玉で引っかいても傷がつかないだけでなく、樹脂製のものにはない重量感を肌で感じられる。

column

パーソナルチェアーとベンチ@セカンドハウスの家具

パーソナルチェアーとベンチ

出来るだけベッドやソファなどの固定的な家具は置かずに、持ち運べるパーソナルチェアーや経年変化が楽しめる無垢の家具を選んでいる。NYチェアー3脚置いてあり、内部、外部を問わずに好きな居場所を見つけ移動する。ダイニングのベンチは「石巻工房」の「石巻ベンチ」で、無垢の米松の厚みが心地よく、外に引きずり出してバーベキューをする時も役に立っている。

モミジ@季節を感じる

モミジ

丹沢湖の紅葉は毎年行われる「丹沢湖マラソン大会」の頃、上流の中川では少し遅く12月の頭がモミジの見頃。モミジが落葉するとそろそろ薪ストーブに時期かなと。

物々交換@ご近所さん

野菜

「山のセカンドハウス」に行くときは、自宅の近くの美味しい魚屋で干物を買ってご近所に届けることにしている。いわゆる手土産だと逆に気をつかわせてしまうので、山にはない魚、しかも気軽なものとして干物を選んでいる。「山のセカンドハウス」に到着すると、子ども達と数軒のご近所に干物を渡しに挨拶しに行く。昨日の大雨はこんなだった、来週は町のお祭りがあるなど、井戸端会議の時間を楽しんでいる。

それだけじゃない、夕飯の準備をしていると、ダイニングに大きな引戸の外側にはご近所さん。山でとれた山菜や畑の新鮮な野菜、自家製のコンニャクなどをお返しに持ってきてくれる。毎回何かをくれるので悪いなあと思う一方、昔ながらの物々交換的な交流を大切に継続することの方が重要だと思い続けている。もちろん、逸脱して美味しい。

空調計画

この辺りは、夏は日陰に入れば涼しく、冬は雪はあまり降らないが気温が低い。セカンドハウスまで来てエアコンで暖をとるのは寂しく、家族があつまる薪ストーブ「ワム クラシック4」を置いている。黒い煙突の背後にあるシルバーのパイプは薪ストーブで暖められた空気を床下に送り込むためのもの。床下には中間ダクトファンという換気扇がついており、上部の温かい空気を吸い込み、何箇所かに設置した床のグリルから吹き出す仕組みとなっている。暖まるほどではないが、家全体を冷えていない状態にしてくれる。冬は薪ストーブに集まり、会話が弾む。

皆様のセカンドハウス、建築家が土地探しからワンストップでお手伝いします

日常生活では得られない自然環境や空間体験を手に入れて、都会では実現出来なかった使い方を実践する。そんなセカンドハウスを家族や友人、近所の人も巻き込んで使い倒す。特に、子どもを育てる環境や様々な体験をさせることの重要性を感じている子育て世代の方もセカンドハウスを手に入れられるサービスを、建築家としての専門知識をいかして提供したいと思います。土地探しから家づくり、見積調整から施工会社選び、外構や家具選定まで、建築家がコーディネーターとなってお手伝いします。

また、「山のセカンドハウス」のコラムやオープンハウスなどのイベント情報は、FBにて発信していきますので、フォローお願いします。

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